【実際の資料を大公開】スタートアップ向けピッチ資料の作り方

本記事では、ピッチやビジネスコンテストへの参加を考えているスタートアップ・個人を対象に、実際の事例を参考にしながら資料の作り方(構成・デザイン)を解説します。

資金調達を考えているスタートアップにとって、短い時間でどのように投資家を惹き付け、出資してもらうのかは非常に重要なテーマです。本記事でしっかりとお作法を身に付け、あなたが望むビジネスを実現させましょう!

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もしご自身で作成するのが難しい場合は、プロに依頼することもできますので検討してみてください。
「資料作成の費用」と「優れた資料を通して得られる利益」を天秤にかけて、正しい判断をしてくださいね!

そもそもピッチとは?

ピッチとは、特定のアイデア、製品、サービスを他者に対して短時間で効果的に説明することを指します。主にビジネスの世界で使われる言葉であり、スタートアップや起業家が投資家などに自社のビジネスモデルや価値を伝える際に利用されます。

ピッチは通常、時間が限られている状況で行われるため、要点を的確に伝えることが求められます。典型的なピッチの時間枠は数分から数十分であり、短い時間で相手の興味を引き、納得させることが非常に重要です。良いピッチは、問題提起や解決策の提示、市場の説明、ビジネスモデルの説明、競合分析など、さまざまな要素を含んでいます。また、ストーリーテリングや視覚的な要素を活用し、相手の心に響く効果的なピッチ資料を作成することが、投資家などから資金を勝ち取るうえで必須の要素となります。

一般的になじみがある言葉は「プレゼンテーション」かと思いますが、両者に明確な違いがあるわけではありません。強いてあげるとすれば、プレゼンテーションよりもピッチのほうが、より短時間になる傾向があり、かつ資金調達を目的とするケースが多いようです。

スタートアップ向け ピッチ資料の構成・デザイン

さて、この記事をご覧になっているスタートアップ・個人の皆さまは「どのようなピッチ資料を作ればいいの?」と気になっていることでしょう。もったいぶらず、早速ピッチ資料の構成・デザインについて、実際のピッチ資料を参照しながら学んでいきましょう!

なお、ご紹介するのはあくまで参考です。あなたが考えている製品・サービスの内容や、ピッチコンテストの目的などを踏まえ、ぜひオリジナル資料にアレンジしてみてください。

表紙

どのようなピッチ資料でも表紙は必要です!
重要なのはとにかくインパクトを出して、「このピッチ資料イケてるかも!」「なんだか期待できそうだな!」という印象を投資家に持ってもらうことです。製品・サービスをイメージできる画像を使用したり、大きな文字・小さな文字でメリハリをつけた構成・デザインを採用するのも面白いでしょう。

エグゼクティブサマリ

短い時間で要点を伝えなければいけないピッチにおいて、エグゼクティブサマリは必須の要素です!
数十枚にわたるピッチ資料を1枚で表現することが本スライドの目的であり、「このスライドだけ読めばOK!」になることを目指してください。創業者の画像や経歴を載せて、情熱を伝えることも一案でしょう。

目次

ピッチ資料の枚数が5枚程度であれば不要ですが、10枚以上ある場合は目次があったほうが親切です!
多くのピッチ資料では、目次はシンプルな構成・デザインになっていることが一般的です。もしピッチコンテストにおける審査基準が開示されている場合は、どの目次項目が、どの審査基準に該当するのか明示してもいいでしょう。

製品・サービスの概要

まずは、製品・サービスの概要について1スライドでしっかりと説明しましょう!
文字量はできる限り少なく、「どんな製品・サービスなのか?」に絞って表現します。写真やイラストを使うことで、投資家に対してインパクトを与えることが可能です。

製品・サービスの詳細

必須ではありませんが、「概要」スライドで説明しきれない場合は詳細を補足するのもよいでしょう!
ここでも余分な情報は載せず、大きな特徴などに絞って言及するようにしましょう。

課題・ターゲット

製品・サービスについての説明が終わったら、誰の・どのような課題を解決することができるのか示してください!
特にピッチで資金を調達できるようなスタートアップ・個人は、投資家をワクワクさせる必要があります。日常のほんの小さな課題ではなく、社会的に大きなインパクトのある課題・ターゲットを設定するようにしましょう。

競合優位性・差別化

競合に対してどのような優位性を持つのか、どのように差別化されているのかに関する説明も必要不可欠です!
よく使用されるのは市場を2軸で分割し、その中で競合をマッピングするやり方です。「競合はいません!」と断言するピッチ資料も多いですが、そのような市場は現代においてほとんどないため、説得力を加えるためにも必ず競合をマッピングするようにしてください。

ビジネスモデル

「誰から」「どのように」「いくら」徴収するのかという、儲け方も忘れないようにしましょう!
構成・デザインは自由ですが、人や製品・サービスやカネの関係性が分かるように図を使うことをおすすめします。以下の事例スライドでは、収入源(誰から徴収するか)に応じてスライドを分けることで、容易に理解できるように工夫しています。

収益計画・市場規模

取り扱う製品・サービスの収益計画・市場規模を投資家に提示することも必須でしょう!
ここで注意すべきポイントは、課題・ターゲットの説明と同様に「投資家をワクワクさせられるような規模か?」という点です。売上や市場規模が1億円程度では投資家はワクワクしません。目安として、最低でも売上は10億円以上、市場規模は100億円以上になるように設計してください。

将来性

現状のビジネスだけでなく、将来的にどのような成長を見込むことができるのかという点も記載しましょう!
5年後・10年後・20年後も市場に受け入れられるビジネスなのか、定量的な根拠を持って投資家を説得する必要があります。

補足

直接説明が可能なピッチでは見かけませんが、書類選考に向けてピッチ資料を作成する必要がある場合、補足スライドを設けても良いでしょう!
例えば想定されるQ&Aを箇条書きで記載したり、収益計画の詳細についてExcel形式で説明するケースが多く見受けられます。ご自身が作成するピッチ資料の目的に応じて、そもそも補足が必要か、必要ならばどのような内容を盛り込むかを考えましょう。

裏表紙

裏表紙もお作法として必要です!
表紙と違ってシンプルな構成・デザインで問題ありませんが、代表者氏名、会社名、電話番号、メールアドレスなど、必要な情報があれば合わせて記載するようにしましょう。

ピッチ資料の作成手順

実際の事例を通して、スタートアップにおけるピッチ資料の構成・デザインはイメージできたでしょうか?
しかし、ピッチ資料を作成する際は、色々と気を付けるべき注意点があります。この章では、そうしたポイントについてしっかり理解し、ピッチ資料の作成手順について学んでいきましょう。

何を目的として、誰にピッチ資料を見せるのか?

闇雲にピッチ資料を作り始めてしまうと、最終的に「結局よく分からない資料になってしまった」という失敗に繋がってしまいます。

スタートアップがピッチ資料を作成する目的が書類選考の通過ということであれば、対面での説明よりもピッチ資料上の情報量を増やし、説明しなくても理解できる資料に仕立てる必要があります。あるいは採用ピッチ資料であれば、採用候補者がワクワクするような資料にする必要があります。
ピッチ資料を投資家に見せる場合、投資家が気にする「本当に儲かるのか?」という要諦を押さえたピッチ資料に仕立てるべきです。

このように、どのような目的で、誰に対するピッチ資料を作成するのかに応じて、資料に盛り込むべき内容が大きく異なってきます。実際に手を動かし始める前にしっかりと考えるようにしましょう。

ピッチ資料の構成・デザインはどうすべきか?

スタートアップのよくある間違いが、1スライドずつ順番にピッチ資料を作り込んでしまうことですが、これは完全にNGです。

そのようにピッチ資料を作成してしまうと、資料全体のストーリーに一貫性がなくなり、結局何を伝えたいのかよく分からない資料が出来上がってしまいます。ピッチ資料を作成する際は、必ず各スライドに何を書くかを明確にしてから、つまりスライドのタイトルとメッセージ(スライドで何を伝えたいのか)を明確にしてから、各スライドを作り込むように心がけましょう。

投資家(エンジェルやベンチャーキャピタル)などは、コンサルティング会社や投資銀行出身者が多く、こうしたお作法にこだわりがある方も多数在籍されているため、必ずストーリーが一貫したピッチ資料を作るようにしてください。

ピッチ資料の中身はどのような内容にすべきか?

ピッチ資料の構成・デザインが決まった後は簡単で、各スライドのタイトル・メッセージに合わせてスライドの内容を作り込んでいきましょう。

ここで「うーん、このスライドの内容はどうしよう」というお悩みが出てきたら危険信号です。それは、前述の構成・デザインが練り込まれていないということですので、そうなった時点で構成・デザインを見直す癖をつけましょう。

また、スライドの中身を作りきった後はへとへとになっていると思いますが、必ず数回の見直しを行ってください。誤字脱字があるだけで、投資家からは「このスタートアップは大丈夫なのか?」という不信感を持たれてしまいます。可能であれば、家族や友人、同僚など、第三者の目を通すことをおすすめします。

ピッチ資料の事例

ここまでピッチ資料の構成・デザインを丁寧に見てきました。
本章では、誰もが知る世界の有名企業が、実際にどのようなピッチ資料を用いていたのか学んでいきましょう。

Airbnb

今や知らない人はいないサービスですが、最初は他のスタートアップと同様、小さな企業でした。
これはAirbnbが2008年にSequoia Capitalから60万ドル(6,000万円以上)を獲得したピッチ資料です。

Tinder

次はオンラインマッチングアプリのパイオニアであるTinderのピッチ資料です。
余計な説明は一切なく、口頭での補足に重点を置いた資料であることが読み取れますね。

Linkedin

2004年に1,000万ドル(10億円以上)を調達したLinkedinのピッチ資料もお見せしておきましょう。
各種定量分析をはじめ、よく練り込まれた資料です。書類選考用にも使用された可能性がありますね。

2024年開催のビジネスピッチ・ピッチイベント

最後はおまけです!

2024年に開催されるビジネスピッチ/ピッチイベントを以下の記事でご紹介しています。今回学んだピッチ資料の作り方を踏まえ、ぜひぜひ積極的にエントリーしてみてください!

【対象者別 参加できるコンテストまとめ】

中学生が参加できるビジネスピッチ/ピッチイベント一覧(2024年)

高校生が参加できるビジネスピッチ/ピッチイベント一覧(2024年)

大学生が参加できるビジネスピッチ/ピッチイベント一覧(2024年)

スタートアップや社会人が参加できるビジネスピッチ/ピッチイベント一覧(2024年)

まとめ

本記事ではピッチ資料の作り方について、事例を交えながら解説させていただきました。
ビジネスピッチ/ピッチイベントに参加し、投資家からの資金調達などを実現するためには、しっかりしたピッチ資料を作成して挑む必要があります。なかなかハードルが高いと感じるかもしれませんが、ぜひ挑戦してみてください。

もしご自身で作成するのが難しい場合は、プロに依頼することもできますので検討してみてください。
「資料作成の費用」と「優れた資料を通して得られる利益」を天秤にかけて、正しい判断をしてくださいね!