社内ビジネスコンテストとは?事例10選から学ぶ進め方・成功のコツ・失敗パターン

「社内ビジネスコンテストを開きたいが、何から決めればよいのか分からない」「開催はしたものの、受賞したアイデアが事業にならなかった」。社内ビジネスコンテスト(社内ビジコン)の企画や運営を任された方の中には、このような悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、社内ビジネスコンテストの基本と、開催する会社・参加する社員それぞれのメリットを整理したうえで、大手企業10社の事例を紹介します。そして、事例から見えてきた進め方、成功のコツ、よくある失敗パターンと対策、審査基準の決め方までを、運営を担当する方に向けて解説します。

本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
国内最大級のビジネスコンテストデータベース「ビジコンDB」の代表。外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などで勤務した後、ビジコンDBを設立。

目次

社内ビジネスコンテストとは、社員から新規事業や業務改善のアイデアを募り、審査・表彰したうえで、事業化や実行につなげる社内の取り組みです。略して「社内ビジコン」とも呼ばれます。

一般的なビジネスコンテストとの大きな違いは、応募者が自社の社員であることと、受賞したアイデアを自社の中で事業にしていくことです。そのため、特典も賞金だけでなく、事業化に向けた予算や業務時間、事業の責任者になる権利などが中心になることが多いです。また、社員の挑戦を後押しし、組織の風土を変えるきっかけとしても活用されています。

社内ビジネスコンテストは、目的によって、大きく2つの型に分けられます。

事業化型

新しい事業を生み出すことを目的に、事業計画まで作り込んだ提案を募る型です。審査を通過した提案には、事業化の検証に使う予算や業務時間が与えられることが多く、受賞者が事業の責任者になる例もあります。応募のハードルは高くなりやすいため、新規事業の予算や、受賞後に検証を進める体制を用意できる会社に向いています。

アイデア型

業務改善や商品企画などのアイデアを、アイデアの段階から幅広く募る型です。社内アイデアコンテストと呼ばれるものの多くは、この型に当てはまります。応募のハードルが低く、多くの社員が参加しやすいため、初めて開催する会社や、全社員の参加を促したい会社に向いています。

初めて開催する場合は、アイデア型から始めて、回数を重ねるごとに事業化型へ発展させる方法もあります。どちらの型を選ぶかは、次の章で紹介するメリットのうち、何を一番に得たいかで決めるとよいでしょう。

社内ビジネスコンテストは、会社にとって、新しい事業の種を見つける場であると同時に、人と組織を育てる場でもあります。主なメリットは、次の3つです。

新規事業の種を見つけられる

現場で顧客や業務に向き合っている社員は、経営層が気づきにくい不満や不便を知っています。社内ビジネスコンテストは、こうした現場の気づきを事業のアイデアとして集める仕組みです。自社の顧客基盤や技術、ブランドを活かせるアイデアが集まりやすい点も、社外から事業の種を探す場合との違いです。

人材を発掘・育成できる

事業計画を作り、審査員の前で発表する経験は、課題を見つける力や、数字で考える力、人を巻き込む力を鍛える機会になります。また、普段の業務では見えにくい、新しいことに挑戦する意欲を持つ社員を見つけることもでき、将来の事業責任者や経営人材の候補を発掘する場としても役立ちます。

組織が活性化する

部署や役職を越えてチームを組むことで、普段は関わりの少ない社員どうしの交流が生まれます。さらに、経営層が社員の提案に真剣に向き合う姿を見せることで、「この会社では挑戦できる」という風土が育ち、社員のやる気の向上にもつながります。

社内ビジネスコンテストは、参加する社員にとっても、大きなメリットがあります。運営する側がこのメリットを社員に分かりやすく伝えることで、「業務が忙しいのに、なぜ参加するのか」という疑問が解け、応募が集まりやすくなります。

事業づくりを経験できる

顧客の課題を見つけ、解決策を考え、収益の見込みを立てるという事業づくりの一連の流れを、会社の支援を受けながら経験できます。会社を辞めて起業するよりも小さなリスクで、新しい事業に挑戦できる点が魅力です。

経営層に直接提案できる

普段の業務では、経営層に自分のアイデアを直接伝える機会は多くありません。社内ビジネスコンテストでは、役員や社長が審査員を務めることが多く、自分の考えを経営層に届け、評価してもらうことができます。受賞をきっかけに、新しい事業の責任者や、希望する部署での仕事を任されることもあります。

部署を越えたつながりができる

チームを組んだり、メンタリングを受けたりする中で、ほかの部署の社員や社外の専門家とのつながりが生まれます。こうしたつながりは、受賞の有無にかかわらず、その後の業務やキャリアの財産になります。

ここでは、社内ビジネスコンテストや、それに近い新規事業の提案制度に取り組んでいる大手企業10社の事例を紹介します。いずれも、各社の公式サイトや報道発表などの公開情報(2026年10月時点で確認)をもとにまとめたもので、数字は出典に記載された時点のものです。

企業制度名開始主な実績・特徴
リクルートRing1982年誰でも応募でき、審査を通過すると事業化の検証へ
サイバーエージェントあした会議2006年子会社32社を設立(2021年9月末時点)
ソニーSSAP(現 Sony Acceleration Platform)2014年2018年から社外の企業にも提供
パナソニックGame Changer Catapult2016年5年間で200件以上の応募
三菱電機GEMstones2021年延べ630名が参加し、283件のアイデア
東急社内起業家育成制度2015年7件の新規事業が誕生(2023年1月時点)
丸紅ビジネスプランコンテスト2018年グループ5万人超が対象、毎年開催
JR東日本ON10002018年4,800件の応募、9件が事業を開始
NTTドコモdocomo STARTUP2023年社員の起業を支援し、退職後の復帰も可能
ウエルシア薬局社内ベンチャー制度2023年第1号として介護タクシー事業を開始

リクルート「Ring」:誰でも応募できる、40年以上続く提案制度

Ringは、1982年に始まったリクルートグループの新規事業提案制度です。入社1年目から経験豊富な社員まで、事業開発の経験を問わず誰でも応募でき、リーダーがリクルートの社員であれば、社外の人もチームに加われます。審査は、エントリーシートによる予選、動画によるプレゼン、対面でのプレゼン、経営の承認と段階的に進み、通過したチームには提案先の部門への兼務が発令され、事業化の検証が始まります。2026年度には、AI時代の顧客体験を考える新しい部門も設けられました。

ポイント:
審査の段階ごとに、誰が何を判断するかが明確で、通過後は「兼務の発令」という形で、検証に使う時間が制度として保証されています。また、社内の知見者と壁打ちをする場や、AIによるフィードバックなど、応募前からアイデアを磨く支援も充実しています。

出典:株式会社リクルート「新規事業提案制度「Ring」」

サイバーエージェント「あした会議」:役員が率いるチームで子会社32社を創出

あした会議は、2006年に始まった、新規事業や会社の課題の解決策を提案・決議する会議です。年に1〜2回、合宿の形式で開かれ、執行役員が事業責任者などを選んでチームを組み、代表が審査して得点を競います。約30の提案のうち15〜20案ほどが決議され、2021年9月末時点で、あした会議をきっかけに設立した子会社は32社、新規事業による累計の売上高は約3,259億円にのぼります。

ポイント:
役員がチームを率い、代表が審査するため、提案がそのまま経営の意思決定につながります。新規事業だけでなく、人事の仕組みなど会社の課題の解決策も対象にしている点も特徴です。

出典:CyberAgent Way「サイバーエージェントの持続的成長を支える「あした会議」」

ソニー「SSAP」:社内プログラムを仕組み化し、社外にも提供

ソニーは、2014年に社内の新規事業を後押しするプログラムとしてSSAPを始めました。アイデアの募集から事業化までを支える仕組みを整え、2018年10月からは、そのノウハウを社外の企業にも提供しています。現在はSony Acceleration Platformとして、2026年9月末時点で、28業種の企業に1,080件以上の支援を行っています。

ポイント:
コンテストを一度きりの催しで終わらせず、アイデアを事業にするまでの工程とノウハウを、繰り返し使える仕組みとして整えています。社内で磨いた仕組みが、社外にも通用するレベルになった例です。

出典:Sony Acceleration Platform 公式サイト

パナソニック「Game Changer Catapult」:社外での事業化も視野に入れた選抜型

Game Changer Catapultは、家電事業などを担う社内カンパニーが2016年に立ち上げた新規事業の創出プログラムです。社員から事業のアイデアを募り、書類選考とプレゼン審査を経て選ばれたチームは、本業と並行して、社外の有識者によるメンタリングなどを受けながらアイデアを磨きます。始まってから5年間で200件以上の応募があり、毎年、厳選された6〜8件だけが次の段階に進みます。

ポイント:
完成度を100%求めず、試作版で検証しながら磨くことや、社内に限らず社外での事業化も選択肢に入れることで、スピードを重視しています。厳しく選抜したうえで、社外の専門家の力を借りて伴走する形です。

出典:Panasonic Newsroom Japan「新たな「カデン」で社会課題の解決に貢献~ゲームチェンジャー・カタパルト」

三菱電機「GEMstones」:約20年ぶりの開催で、283件のアイデアが集結

GEMstonesは、三菱電機が2021年から2022年にかけて、約20年ぶりに開いた社内のビジネスアイデアコンテストです。延べ630名の社員が参加し、283件のアイデアが集まりました。審査で45件、さらに7件へと絞り込まれ、最終選考は、社内と社外の審査員4名ずつが審査するピッチイベントの形式で行われました。

ポイント:
社員が企画書をまとめて会社に提案し、承認を得て事務局が発足しました。個人で応募した社員にはチームを組めるよう事務局が仲間を募り、最終選考の前には社外のメンタリングも用意するなど、業務と両立しやすい工夫をしています。

出典:三菱電機 Biz Timeline「イノベーション文化の醸成を目指して社内ビジネスアイデアコンテスト「GEMstones」第1回開催!」

東急「社内起業家育成制度」:報酬を事業化の成果に連動させる

東急は、2015年4月に社内起業家育成制度を作りました。それまでの提案制度との大きな違いは、提案の内容そのものではなく、実際に事業化して生まれた成果に応じて報酬を出すことと、子会社を設立する場合には提案者自身も出資できるようにしたことです。連結子会社の社員も対象に加え、2023年1月時点で7件の新規事業が生まれています。その一つであるシェアオフィス事業「NewWork」は、2016年に始まり、2020年に正式に事業化されました。

ポイント:
「アイデアを出したら終わり」ではなく、提案者が事業を軌道に乗せるまでやり遂げ、会社がその成果に報いる仕組みにしています。提案者の本気度を高め、受賞後に事業が止まることを防ぐ工夫です。

出典:東急株式会社 100年史「社内起業家育成制度による事業化」

丸紅「ビジネスプランコンテスト」:グループ5万人超を対象に毎年開催

丸紅グループは、2018年度から毎年、ビジネスプランコンテストを開催しています。従業員5万人を超えるグループ全体を対象とした取り組みで、2024年度で7回目を迎えました。多数の応募から審査を通過したファイナリストが、デモデイで社外の審査員の前でピッチを行い、優勝者は事業化に挑戦する権利を得ます。

ポイント:
本社だけでなくグループ会社の社員まで対象を広げ、毎年続けることで、挑戦する文化を根づかせています。最終審査に社外の審査員を招き、客観的な目で評価している点も特徴です。

出典:株式会社ブイキューブ(報道発表)「丸紅、社内公募型のビジネスプランコンテストを…」

JR東日本「ON1000」:グループ社員から4,800件の応募

ON1000は、JR東日本グループの社員を対象にした新事業創造プログラムです。「1000のアイデア、100の事業」が次々と生まれるようにという思いを込めて名づけられました。2018年から4,800件の応募があり、9件が事業を始め、そのうち1件は新会社の設立に至っています。事業化の例には、外出先で予約して使えるベビーカーのレンタルサービスなどがあります。

ポイント:
グループ全体から大量のアイデアを集めたうえで、事業化まで進める件数を絞っています。応募の多さと事業化の件数を公開していることも、制度の成果を社内外に示す工夫といえます。

出典:JR東日本 新事業創造プログラム「ON1000」

NTTドコモ「docomo STARTUP」:退職後も復帰できる、社員の起業支援

docomo STARTUPは、ドコモグループが2023年に立ち上げた、社員の起業を支援するプログラムです。アイデアを考える段階から、資金を調達して会社を立ち上げるまでを一貫して支えます。外部の投資家からの資金調達ができ、起業する本人が主導権を持てることや、会社を立ち上げる段階で出向か退職かを選べ、退職後も復帰できる制度があることが特徴です。2024年に事業を始めたサービスの中には、2026年2月時点でアプリが8.5万回ダウンロードされたものもあります。

ポイント:
社内ビジネスコンテストの「その先」として、社員が起業する道まで用意しています。退職後に戻れる仕組みが、本気の挑戦を後押ししています。

出典:NTTドコモ「docomo EVERYDAY」

ウエルシア薬局「社内ベンチャー制度」:本業の現場から生まれた介護タクシー

ウエルシアグループは、2023年に社内ベンチャー制度を始めました。その制度で事業化が採択された第1号が、介護タクシー事業「ウエルタク」です。ウエルシア薬局は専門の会社を設立し、2025年3月からサービスを始めています。

ポイント:
通院や外出に介助が必要な方の移動を支える事業で、高齢の方の暮らしを支える薬局の本業と、つながりの深い分野です。本業の顧客との接点から生まれたアイデアは、会社の強みを活かしやすく、事業化につながりやすい好例です。

出典:薬事日報「【ウエルシア薬局】介護タクシー専門会社設立‐社内ベンチャー制度で採択」

ここからは、社内ビジネスコンテストの進め方を、7つのステップで解説します。企画から最終審査までは、半年ほどを見込むケースが多いようです。各ステップの時期の目安は、例えば次のとおりです。

ステップ時期の目安
ステップ1:目的と目標を決める1か月目
ステップ2:テーマと応募資格を決める1か月目
ステップ3:スケジュールと予算を決める1か月目
ステップ4:審査基準と審査員を決める1〜2か月目
ステップ5:告知して、応募を後押しする2〜3か月目
ステップ6:審査して、表彰する4〜5か月目
ステップ7:事業化を支援する6か月目以降

なお、実際の期間は、会社の規模や、事業化型・アイデア型といった型によって変わります。特に、受賞後の事業化の検証は、数か月から1年以上かかることもあるため、コンテストの期間とは分けて計画しておくとよいでしょう。

ステップ1:目的と目標を決める

まずは、何のために開催するのかを決めます。「新規事業を生み出す」「挑戦する人材を育てる」「組織を活性化する」のどれを一番に重視するかで、テーマや審査基準、受賞後の扱いが変わるためです。そのうえで、「応募件数100件」「事業化の検証に進む案件を3件」のように、数字で測れる目標を決めておくと、開催後に成果を振り返ることができます。

ステップ2:テーマと応募資格を決める

次に、募集するテーマと、誰が応募できるかを決めます。テーマは、「自由テーマ」にすると幅広いアイデアが集まり、「自社の顧客基盤を活かした新規事業」のように絞ると、事業化しやすいアイデアが集まります。応募資格は、個人かチームか、グループ会社の社員も含めるか、社外の人がチームに加わってもよいかなどを決めます。

募集要項には、例えば次のような項目が記載されるケースが多いです。
・開催の目的とテーマ
・応募資格(対象者、個人・チームの別、人数)
・応募の方法と締切(応募書類のひな形)
・審査の流れと日程(書類審査、最終審査など)
・審査基準と審査員
・受賞した場合の特典(賞金、事業化の予算、業務時間の扱いなど)
・応募にかかる時間を業務として扱うかどうか

ステップ3:スケジュールと予算を決める

スケジュールが決まったら、必要な費用を見積もります。費用としては、例えば次のようなものが考えられます。

費用の項目主な内容費用を抑える工夫
賞金・副賞受賞者への賞金や記念品賞金よりも、事業化の検証に使える予算を厚くする
事業化の検証費試作品づくり、顧客への調査、実証実験など検証の段階ごとに予算を出し、結果を見て追加する
社外の審査員・メンター謝礼や交通費社内の役員や、新規事業の経験がある社員も活用する
会場・配信最終審査の会場、オンライン配信社内の会議室とオンラインを組み合わせる
告知・運営説明会、ポスター、応募の管理社内のポータルや、既存のツールを使う

表のうち、特に大きくなりやすいのは、賞金よりも、受賞後の事業化の検証費と考えられます。コンテストの予算だけでなく、受賞後に使える予算を先に確保しておくことが、事業化につなげるための大切なポイントです。

ステップ4:審査基準と審査員を決める

審査基準は、目的に合わせて5つ前後の項目に絞り、配点を決めます。社内ならではの審査項目や配点の例は、後の章「社内ビジネスコンテストの審査基準」で詳しく解説します。審査員は、経営層に加えて、事業部門の責任者や社外の専門家を組み合わせると、多面的に評価できます。

ステップ5:告知して、応募を後押しする

告知は、社内のポータルやメール、朝礼など複数の方法で行い、経営層からのメッセージも添えると、会社として本気で取り組んでいることが伝わります。また、説明会を開いたり、応募書類のひな形を配ったりして、応募のハードルを下げましょう。

そして、応募の前後には、社内の知見者や社外の専門家と壁打ちができるメンタリングの機会を用意すると、アイデアの質が上がります。業務が忙しい社員でも参加できるよう、応募の準備にかける時間を業務として扱うかどうかも、事前に決めて伝えておくことが大切です。

ステップ6:審査して、表彰する

審査は、書類審査で候補を絞り、最終審査で経営層の前で発表してもらう2段階で行うケースが多いです。書類審査の結果は、落選した応募者にも、評価の理由やコメントを添えて返しましょう。最終審査は、社内に公開したり、オンラインで配信したりすると、応募しなかった社員にも関心が広がり、次回の応募者を増やすきっかけになります。

ステップ7:事業化を支援する

最後に、受賞したアイデアを事業にするための支援を行います。具体的には、検証に使う予算、業務時間(兼務や専任の発令)、判断を担う担当役員を決め、「いつまでに、何を確かめられたら、次の段階に進むのか」という関門を設けます。事業化の支援は、コンテストの成果を大きく左右する部分といえます。ここが決まっていないと、どれだけ良いアイデアが集まっても、事業にはつながりにくくなります。

紹介した10社の事例には、いくつかの共通点があります。ここでは、事例から見えてきた、社内ビジネスコンテストを成功させるコツを5つ紹介します。

経営トップが関わり続ける

役員がチームを率いたり、代表や役員が自ら審査したりする事例のように、経営層が深く関わるほど、提案が経営の意思決定につながりやすくなります。また、経営層が開催の目的を自分の言葉で発信し続けることで、社員にも「会社が本気で挑戦を求めている」ことが伝わります。

受賞後の道筋を先に決める

兼務の発令によって検証の時間を保証する、事業化の成果に応じて報酬を出す、といった事例のように、成功している会社は、受賞したあとに何が起きるのかを、開催前から制度として決めています。予算、業務時間、担当役員、次の関門の4つは、募集を始める前に決めておきましょう。

応募のハードルを下げ、伴走して磨く

応募の段階から完成した事業計画を求めると、応募は集まりにくくなります。アイデアの段階で応募できるようにしたうえで、壁打ちやメンタリング、チームづくりの支援を通じて、事業計画へと磨き上げていく形が効果的です。

社外の目を入れる

最終審査に社外の審査員を招いたり、社外の専門家にメンタリングを依頼したりすることで、社内の常識にとらわれない評価や助言が得られます。社内だけで審査すると、自社の既存事業に近いアイデアばかりが評価されがちなため、客観的な視点を加えることが大切です。

毎年続け、成果を社内に見せる

毎年開催している事例のように、コンテストは続けるほど、挑戦する文化が根づいていくと考えられます。応募の件数や、事業化に進んだ件数、実際に生まれた事業を社内に発信すると、「応募すれば本当に事業になる」という実感が広がり、次の応募につながります。

社内ビジネスコンテストは、開催しても成果が出ず、毎年なんとなく続けるだけの「形骸化」に陥ることがあります。よくある失敗パターンと、その対策を紹介します。

開催すること自体が目的になる

「他社もやっているから」「新規事業に取り組んでいる姿勢を見せたいから」といった理由で始めると、開催することがゴールになり、成果を振り返らないまま終わってしまいます。対策は、開催前に目的と数字の目標を決め、開催後に必ず振り返ることです。

受賞後に予算や時間がつかない

特によく見られる失敗が、受賞しても事業化に使う予算や時間が用意されておらず、通常の業務に戻ってしまうパターンです。受賞者の意欲が下がるだけでなく、それを見たほかの社員も応募しにくくなります。対策は、前の章で紹介したとおり、受賞後の道筋を開催前に制度として決めておくことです。

業務が忙しく、応募が集まらない

通常の業務に加えて応募の準備をするのは、社員にとって大きな負担です。上司の理解が得られず、応募をためらう社員もいます。対策として、応募の準備にかける時間を業務として認める、上司に制度の趣旨を説明しておく、アイデアの段階で応募できるようにする、といった方法があります。

審査基準があいまいで、アイデアの新しさに偏る

審査基準があいまいだと、審査員の好みで結果が決まり、応募者の納得感が得られません。また、アイデアの新しさばかりを評価すると、自社で事業化しにくい案が受賞してしまいます。対策は、自社の戦略との合致や、顧客の課題を確かめたかどうかなど、事業化の見込みを測る項目を審査基準に入れることです。

2回目以降、応募が減っていく

初回は盛り上がっても、受賞したアイデアがその後どうなったのかが見えないと、2回目以降は応募が減っていきがちです。対策は、過去の受賞案の進み具合を社内に発信することと、落選した応募者にもフィードバックを返し、再挑戦を後押しすることです。

社内ビジネスコンテストの審査基準は、一般的なビジネスコンテストの審査基準をもとに、社内ならではの項目を加えて作るとよいでしょう。ビジコンDBに掲載している2026年のビジネスコンテストのうち、審査の項目を読み取れた114件では、よく使われる審査の観点は次のとおりでした。

審査の観点割合(全114件中)
新規性・独自性75%
実現可能性67%
市場性・成長性52%
収益性・事業性49%
社会性・地域貢献49%

表のとおり、新規性・独自性(75%)と実現可能性(67%)が、審査基準の柱です。社内ビジネスコンテストでは、受賞したアイデアを自社で事業にすることが前提になるため、これらに加えて、自社の戦略との合致や、自社の強みを活かせるかといった項目を入れると、事業化しやすいアイデアを選びやすくなります。例えば、次のような配点が考えられます。

審査項目配点主に見るポイント
自社の戦略との合致20点会社が目指す方向や中期経営計画と合っているか
顧客の課題の確かさ20点顧客の困りごとを、聞き取りなどで確かめているか
市場性・収益性20点事業として育つ市場か、収益の見込みがあるか
自社の強みの活用20点顧客基盤・技術・ブランドを活かせるか
提案者の熱意・実行力20点自ら事業を進める意欲と行動があるか
合計100点–

この例では、5つの項目に20点ずつを配分しています。人材の育成を重視する場合は「提案者の熱意・実行力」を、早い事業化を目指す場合は「自社の戦略との合致」の配点を大きくするなど、目的に合わせて調整しましょう。また、審査員は、経営層、事業化したときに受け入れる事業部門の責任者、社外の専門家を組み合わせるケースが多く、受け入れ先の責任者が加わっていると、受賞後の事業化が進めやすくなります。

審査基準の決め方や、審査員の選び方・依頼の仕方は、以下の記事で、ビジネスコンテスト237件の集計とあわせて詳しく解説しています。

最後に、社内ビジネスコンテストについて、企画や運営を担当する方からよく寄せられる質問をまとめました。似た名前の制度との違いもあわせて紹介します。

Q. 社内公募や新規事業提案制度とは、何が違いますか?
新規事業の「社内公募」や「新規事業提案制度」は、社員から新規事業のアイデアを募る仕組みのことで、社内ビジネスコンテストと重なる部分が多くあります。違いを挙げるなら、社内ビジネスコンテストは、期間を決めて募集し、審査・表彰するイベントの形をとることが多いのに対し、提案制度は、一年中いつでも提案できる常設の仕組みとして運用されることもあります。なお、人事の分野で「社内公募」というと、社内で異動先や新しい役職の希望者を募る制度を指すこともあります。

Q. 社内ベンチャー制度や社内起業制度とは、何が違いますか?
社内ベンチャー制度や社内起業制度は、社員が会社の支援を受けながら、新しい事業や会社を立ち上げる仕組みです。社内ビジネスコンテストが「アイデアを募って選ぶ」入口の役割を持つのに対し、これらの制度は「選ばれた事業を立ち上げて育てる」段階を支えます。そのため、社内ビジネスコンテストで選ばれたアイデアを、社内ベンチャー制度で事業化する、という組み合わせもよく見られます。

Q. 社内コンペとは、何が違いますか?
社内コンペは、社内で行う競争の全般を指す言葉で、事業のアイデアだけでなく、デザインや営業成績、業務改善などを競うものも含みます。社内ビジネスコンテストは、その中でも、事業のアイデアやビジネスプランを競う社内コンペといえます。コンペの意味や、社外で参加できるコンペについては、以下の記事で解説しています。

Q. 開催の頻度は、どのくらいが適切ですか?
年に1回開催するケースが多いようです。企画から最終審査までに半年ほどかかるうえ、受賞後の事業化の支援にも時間がかかるため、毎年同じ時期に開催すると、社員も準備の見通しを立てやすくなります。

Q. 予算は、どのくらい必要ですか?
会社の規模や、社外の審査員・メンターを招くかどうかによって大きく変わります。会場に社内の会議室を使い、審査員を社内の役員が務めれば、費用は抑えられます。一方で、受賞後の事業化の検証には、試作品づくりや顧客への調査などの費用がかかるため、コンテストの予算とは別に確保しておくことをおすすめします。

Q. 中小企業でも開催できますか?
はい、開催できます。社員が少ない会社では、全社員が参加するアイデア型にすると、参加者を集めやすくなります。社長が直接審査し、その場で事業化を判断できるのは、意思決定が早い中小企業ならではの強みといえます。

Q. 応募の準備は、業務時間内に認めるべきですか?
認めることをおすすめします。業務時間外だけで準備するように求めると、忙しい社員や、子育て・介護と両立している社員が参加しにくくなります。「月に○時間まで」のように上限を決めて業務として認め、上司にも事前に伝えておくと、応募しやすくなります。

Q. 落選したアイデアは、どう扱えばよいですか?
落選した応募者にも、評価の理由やコメントを返しましょう。アイデアを改善して次回に再挑戦できるようにしたり、事業化には至らなくても、関係する部署に共有して業務改善に活かしたりする方法もあります。落選者を大切にすることが、次回以降の応募を増やすことにつながるでしょう。

Q. 応募を増やすには、どうすればよいですか?
経営層からのメッセージの発信、説明会の開催、応募書類のひな形の配布、アイデアの段階での応募の受付などが効果的です。また、過去の受賞案がその後どうなったかを社内に発信すると、「応募すれば事業になる」という実感が広がります。

Q. 企画の内容を、開催前に客観的に確認する方法はありますか?
ビジコンDBでは、コンテストの企画書や公式サイトのURLを入力するだけで、AIが企画の完成度をチェックする「コンテストの無料AI診断」をご用意しています。社内ビジネスコンテストの企画書も診断できますので、開催前の確認にご活用ください。

社内ビジネスコンテストは、社員から新規事業や業務改善のアイデアを募り、審査・表彰して事業化や実行につなげる取り組みです。会社にとっては新しい事業の種や人材を見つける場であり、社員にとっては、経営層に直接提案し、事業づくりを経験できる場でもあります。

紹介した10社の事例に共通するのは、経営トップが関わり続けることと、受賞後の予算・業務時間・担当役員を開催前から制度として決めていることです。反対に、受賞後の道筋が決まっていないと、どれだけ良いアイデアが集まっても事業につながりにくく、コンテストが形骸化するおそれがあります。

まずは、目的と数字の目標を決め、自社に合った型と審査基準を選ぶところから始めてみてください。

なお、以下の記事では、社外から参加者を募るビジネスコンテストを想定して、企画から集客、当日の運営、開催後のフォローまでの流れを解説しています。社外向けのコンテストを前提にした内容ですが、目的から逆算して企画を立てる、審査の流れと基準を決める、開催後に振り返って次回に活かすといった考え方は、社内ビジネスコンテストでも基本的に同じです。社内での運営にも、そのエッセンスを取り入れてみてください。

また、社内で始めたコンテストを、社外にも参加者を広げて開催したい場合は、ビジコンDBでのコンテストの掲載もご検討ください。ビジネスコンテストを探している学生や社会人、起業家の方々に、コンテストを届けることができます。

ビジコンDBは、社内のコンテストを含め、さまざまなビジネスコンテストの企画・運営に携わってきました。企画の壁打ちを含め、社内ビジネスコンテストについてお悩みのことがあれば、いつでもお気軽にお問い合わせください。