ピッチブック(pitchbook)とは、投資家や取引先などの相手を説得し、「話を進めたい」と思ってもらうための提案資料です。もともとは投資銀行やM&Aの現場で使われてきた言葉ですが、スタートアップやビジネスコンテストの場でも、同じ役割の資料をピッチブックと呼ぶことがあります。
この記事では、ピッチブックの意味や目的、構成要素、作り方のポイントまでを、初めての方にも分かるように解説します。

まずは、ピッチブックのイメージをつかむために、実際のスライドの例をご覧ください。
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本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
国内最大級のビジネスコンテストデータベース「ビジコンDB」の代表。外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などで勤務した後、ビジコンDBを設立。
ご自身で作成するのが難しい場合は、プロに依頼することもできますので検討してみてください!
費用がかかってしまうデメリットはありますが、AIなどを使って作成するよりも格段に「相手に刺さる」資料が手に入ります。ここぞという場面で、ぜひ本気の資料を作成してみてください。

目次
ピッチブックとは?
ピッチブックとは、相手に情報を伝えて説得し、次の行動を引き出すための資料の総称です。英語の「pitch book」に由来し、「pitchbook」と1語で表記されることもあります。「ピッチ(pitch)」には「売り込む」「提案する」という意味があり、ピッチブックは、そのための提案資料を指します。使われる場面によって少しずつ意味合いが異なるため、ここでは、2つの代表的な使われ方を整理します。
投資銀行・M&Aのピッチブック
ピッチブックという言葉は、一般的には、投資銀行やM&Aの現場で使われることが多い言葉です。投資銀行やM&Aアドバイザーが、顧客企業や買い手候補に対して、案件の提案や自社の実績を説明するために作成する資料が、ピッチブックと呼ばれます。
内容は、市場や業界の分析、企業価値の評価、案件の進め方の提案など、多岐にわたります。ページ数が多く、詳細な資料になることも少なくありません。目的は、「この会社に任せたい」「この案件を進めたい」と相手に思ってもらうことです。
スタートアップのピッチブック
一方で、この言葉の使い方が厳密に決まっているわけではありません。スタートアップや新規事業の分野でも、投資家や審査員を説得するための資料を、ピッチブックと呼ぶことがあります。たとえば、資金調達のために投資家へ事業を説明する資料や、ビジネスコンテストで審査員に事業プランを説明する資料です。
呼び方は違っても、「相手を説得するための資料」という役割は、投資銀行・M&Aのピッチブックと共通しています。スタートアップ向けの資料の作り方は、以下の記事で、実際のスライドとともに詳しく解説しています。
ピッチブックの目的
ピッチブックの目的は、相手に情報を伝えるだけでなく、相手が次の行動を起こすところまで導くことです。この目的は、投資銀行・M&Aでも、スタートアップでも、基本的に変わりません。
説得する相手が、顧客企業でも、投資家でも、審査員でも、相手は限られた時間のなかで、「この提案を進めてよいか」を判断しなければならないからです。判断するためには、提案の内容を理解でき、信頼できると納得でき、次に何をすればよいかが分かる必要があります。
そこで、ピッチブックの目的を、3つの段階に分けて整理します。
相手に理解してもらう
まずは、提案の内容を正しく理解してもらうことです。相手は、限られた時間で多くの資料に目を通しています。何の提案なのか、なぜ今それが必要なのかを、短い時間で把握できるようにする必要があります。専門用語や社内でしか通じない表現は避け、初めて見る人にも伝わる言葉で書きましょう。
相手に納得してもらう
次に、「その提案は信頼できる」と納得してもらうことです。提案の内容がどれだけ魅力的でも、根拠がなければ、相手は動けません。市場のデータ、これまでの実績、試算の根拠など、客観的に確認できる情報で、提案を裏付けましょう。投資銀行・M&Aなら案件の評価の根拠、スタートアップなら市場の成長性やチームの実力が、納得の材料になります。
次の行動を促す
最後に、相手に具体的な行動を起こしてもらうことです。「検討します」で終わらせず、面談の設定、出資の検討、契約の締結など、次に何をしてほしいのかを、はっきりと示します。資料を読み終えた相手が、「次は何をすればよいか」で迷わない状態をつくりましょう。
ピッチブックの構成要素
ピッチブックの構成は、使われる場面によって異なります。ただ、相手を説得して動いてもらう資料である以上、どのようなピッチブックにも、共通して必要になる情報があります。ここでは、説得の流れに沿って、8つの構成要素を紹介します。
要約
最初に、資料全体の結論と、提案の全体像を示します。忙しい相手は、最初のページだけで、読み進めるかどうかを判断することも少なくありません。何を提案し、相手にどのようなメリットがあるのかを、1ページにまとめましょう。
現状整理
次に、相手の置かれている状況や、市場・業界の現状を整理します。現状について相手と共通の認識を持つことが、その後の説明を理解してもらう土台になります。事実とデータにもとづいて、客観的にまとめましょう。
課題の抽出
現状を整理したら、そこから見えてくる課題を示します。課題が明確であるほど、提案の必要性が伝わります。「何が問題なのか」「放置するとどうなるのか」まで示すと、相手が課題を自分ごととして捉えやすくなります。
解決策の提示
課題に対する解決策を、具体的に示します。ここが、ピッチブックの中心です。なぜその解決策が最適なのか、他の選択肢と比べて何が優れているのかまで説明できると、説得力が高まります。
根拠の提示
解決策が実現できる根拠を、データや実績で示します。相手の納得を左右する、重要な部分です。市場の規模、これまでの実績、試算の前提などを、客観的に確認できる形で示しましょう。数字には、出典や計算の前提も添えます。
実行体制
提案を、誰が、どのように実行するのかを示します。優れた提案でも、実行できる体制がなければ、相手は安心できません。担当者の経歴や過去の実績、役割分担を示し、「このメンバーなら任せられる」と思ってもらえるようにします。
スケジュール
提案を実行した場合の、今後の進め方と日程を示します。いつまでに何が実現し、どの時点で何を判断するのかが分かると、相手は具体的にイメージできます。主要なマイルストーンを時系列で整理しましょう。
次のステップ
最後に、費用や条件を示したうえで、相手に取ってほしい次の行動を伝えます。面談の設定や提案の承認など、何をしてほしいのかを、はっきり示します。ここまでの説明を受けて、相手が「次に何をすればよいか」を迷わないようにします。
ピッチブックの事例
それでは、スタートアップで使用された実際のピッチブックの中身を確認してみましょう。
事業の目指す姿から始まり、市場・競合の分析と自社の戦略、そして活動計画・財務計画へと、相手を説得する流れに沿って情報を積み上げている資料です。
前章でお話しした要素の多くは含まれていますが、含まれていない要素もあります。状況に応じて最適な構成を考えられれば問題ありません。ぜひ、実際にピッチブックを作る際の参考にしてください。
ピッチブック作成のポイント
ピッチブックの構成が決まったら、次は作り込みの段階です。ここでは、どのようなピッチブックにも共通する、5つのポイントを紹介します。
シンプルな構成
相手は数多くの資料を日々目にするため、シンプルで分かりやすい構成が重要です。情報の詰め込みすぎは避け、相手が理解しやすいように、ストーリーを組み立てましょう。1ページで伝えるメッセージは1つに絞り、直感的に伝わる図や写真を活用するのも効果的です。
具体的なデータ
提案の根拠を示すときは、信頼できるデータを引用することが重要です。公的な統計や第三者機関のレポート、実際の顧客からのフィードバックなどを活用すると、資料の説得力が高まります。数字には、必ず出典を明記しましょう。
相手の視点
ピッチブックは、あくまで相手を説得するための資料です。自分が伝えたいことだけでなく、相手が最も知りたいことを優先して書きましょう。相手が何を重視して判断するのかを事前に考えておくと、強調すべき点が見えてきます。
結論ファースト
相手は、資料を最初から最後まで読むとは限りません。そのため、最初に結論と提案の全体像を示し、そのあとに理由や根拠を続ける流れにしましょう。ページごとのタイトル・メッセージ(スライド上部の一言)も、「市場について」のような内容ではなく、「市場は今後も拡大する」のように、伝えたい結論を書くと、読み飛ばされても要点が伝わります。
見た目の美しさ・統一感
文字の大きさ、色、図の形、余白などのルールをそろえると、資料全体が読みやすくなり、信頼感も高まります。色は多くても3色程度に絞り、強調したい部分だけに使いましょう。ページによってデザインがばらばらだと、内容が良くても、準備不足の印象を与えてしまいます。
よくある質問
最後に、ピッチブックについて、よく検索されている質問をまとめました。気になる点があれば、ぜひ参考にしてください。
Q. ピッチブックとは何ですか?
ピッチブックとは、投資家や顧客企業などの相手を説得し、次の行動を引き出すための提案資料です。もともとは投資銀行やM&Aの現場で使われてきた言葉ですが、スタートアップやビジネスコンテストでも、同じ役割の資料をこう呼ぶことがあります。
Q. ピッチブックはどのような場面で使われますか?
投資銀行やM&Aアドバイザーが顧客企業に案件を提案するときのほか、スタートアップが投資家に事業を説明するとき、ビジネスコンテストで審査員に事業プランを説明するときなどに使われます。いずれも、相手を説得することが目的です。
Q. ピッチブックは英語で何と言いますか?
英語では「pitch book」、または「pitchbook」と表記します。どちらも同じ意味で使われることが多く、厳密な使い分けはありません。
Q. ピッチブックという会社・サービスはありますか?
はい、あります。PitchBook(ピッチブック)は、未上場企業やベンチャーキャピタル、プライベート・エクイティなどの情報を提供する、データサービスの名前です。提案資料としてのピッチブックとは別のもので、投資家や金融機関などが、企業や投資の情報を調べるために使います。料金や機能については、公式サイトでご確認ください。
Q. ビジネス用語の「ピッチ」とは何ですか?
ビジネスにおける「ピッチ」とは、短い時間で相手に提案内容を伝え、興味を持ってもらうことを指します。もともとは「売り込む」という意味の言葉で、スタートアップが投資家に事業を説明するときや、ビジネスコンテストの発表などで使われます。
Q. ピッチとプレゼンテーションの違いは何ですか?
両者に明確な違いがあるわけではありませんが、一般的には、ピッチのほうが短時間で、相手を説得して次の行動(出資や契約など)を引き出すことを重視する傾向があります。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
まとめ
本記事では、ピッチブックの意味や目的、構成要素、作り方のポイントについて解説しました。ピッチブックは、投資銀行・M&Aでも、スタートアップでも、相手を説得して次の行動を引き出すための資料です。現状整理、課題の抽出、解決策の提示、根拠の提示といった共通の流れを押さえておけば、場面が変わっても応用できます。
また、ピッチブックを使って、実際にピッチコンテストやピッチイベントに挑戦したいスタートアップの方は、以下の一覧から、参加できるコンテストを探してみてください。
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ご自身で作成するのが難しい場合は、プロに依頼することもできますので検討してみてください!
費用がかかってしまうデメリットはありますが、AIなどを使って作成するよりも格段に「相手に刺さる」資料が手に入ります。ここぞという場面で、ぜひ本気の資料を作成してみてください。












